母が知らない女になった④

深夜の寝室

 今日は金曜日。

 夜更かしできる。

 金曜日の夜は一人ベッドで洋楽を見るのが大好きな私。

 部屋を暗くして映画を選ぶ。

 今日は何の映画にしよう。金曜日だからいつもより長い映画にしよう。

 

 映画を見ていると、まさが忍び足で入ってきた。

 「なに?!いいところなのに…」

 「ちょっと来て。」

 「今?もうベッド出たくないんですけど」

 全身で出ていけオーラを出した。

 「いいけんはやく」

 まさはひきさがらない。

 「なにって!」

 「また話しとる。」

 「?」

 「パパとママ。こっち来て。静かに」

 「そんなわけないやろ、だってだいぶ前に寝室いったやん。」

 仕事から帰ったら、パパはご飯食べていつも速攻で寝る。

 「いや、しゃべってる。」

 「いやいや。まさも早く寝りって。」

 「じゃあ来てよ!」

 今までひそひそしゃべっていたまさが声をわずかに荒げた。

 「…はいはい。もー…。」

 

 2人で抜き足差し足で寝室へ向かった。閉じているドアに近づく。

 「……△□」

 なんか言ってる…?

 よく聞こえない。

 どうにか聞こえないものか。もっと近づこう。

 「……〇△」

 しゃべってる。

 

 え、何?ラブタイム?これ私達ここにいたらダメなんじゃない?

 

 「…確かにしゃべってるかも。ねえ、戻ろう」

 まさに小声でしゃべりかける。

 戻ろうとは言ったが、なぜか戻れない。

 

 ミシッ!

 床が鳴る。

 「………」

 ドアの向こうでパパとママがこちらに目を向けたのが分かった。

 

 足がすくむ。

 長い沈黙がつづく。

 心臓が波打つ。

 

 やばい、怖い。何か見ちゃいけないものを見ている気分になった。

 自分の部屋に戻らなくちゃ。

 

 「……〇✕…△」

 また話し始めた。

 鼻をすするような音が聞こえてくる。

 ん……?ママ泣いてる?泣いてる…!

 よく聞くと、パパの声は威圧的だ。

 パパが怒ってる。

 ラブタイムなんかじゃない。これは喧嘩だ。

 しかも子どもが聞いちゃいけない種類の。

 まさをみた。

 ガタガタ震えている。

 ああ、どうしよう。

 大丈夫、大丈夫。大丈夫…。