深夜の寝室
今日は金曜日。
夜更かしできる。
金曜日の夜は一人ベッドで洋楽を見るのが大好きな私。
部屋を暗くして映画を選ぶ。
今日は何の映画にしよう。金曜日だからいつもより長い映画にしよう。
映画を見ていると、まさが忍び足で入ってきた。
「なに?!いいところなのに…」
「ちょっと来て。」
「今?もうベッド出たくないんですけど」
全身で出ていけオーラを出した。
「いいけんはやく」
まさはひきさがらない。
「なにって!」
「また話しとる。」
「?」
「パパとママ。こっち来て。静かに」
「そんなわけないやろ、だってだいぶ前に寝室いったやん。」
仕事から帰ったら、パパはご飯食べていつも速攻で寝る。
「いや、しゃべってる。」
「いやいや。まさも早く寝りって。」
「じゃあ来てよ!」
今までひそひそしゃべっていたまさが声をわずかに荒げた。
「…はいはい。もー…。」
2人で抜き足差し足で寝室へ向かった。閉じているドアに近づく。
「……△□」
なんか言ってる…?
よく聞こえない。
どうにか聞こえないものか。もっと近づこう。
「……〇△」
しゃべってる。
え、何?ラブタイム?これ私達ここにいたらダメなんじゃない?
「…確かにしゃべってるかも。ねえ、戻ろう」
まさに小声でしゃべりかける。
戻ろうとは言ったが、なぜか戻れない。
ミシッ!
床が鳴る。
「………」
ドアの向こうでパパとママがこちらに目を向けたのが分かった。
足がすくむ。
長い沈黙がつづく。
心臓が波打つ。
やばい、怖い。何か見ちゃいけないものを見ている気分になった。
自分の部屋に戻らなくちゃ。
「……〇✕…△」
また話し始めた。
鼻をすするような音が聞こえてくる。
ん……?ママ泣いてる?泣いてる…!
よく聞くと、パパの声は威圧的だ。
パパが怒ってる。
ラブタイムなんかじゃない。これは喧嘩だ。
しかも子どもが聞いちゃいけない種類の。
まさをみた。
ガタガタ震えている。
ああ、どうしよう。
大丈夫、大丈夫。大丈夫…。