母に会えなくなった

お題「#この1年の変化

 

 この1年の変化。

 それは、私にとって「母に会えなくなったこと」である。

 

 この世に、大切な人に会えない理由はたくさんあると思う。

 

 コロナの感染リスクを抑えるために会うことを我慢している人もいるだろうし、

 遠距離恋愛をしている人もいるだろう。

 あるいは、亡くなってしまったが、その人を心に思い続けているという人もいると思う。

 

 私の場合は、母が家を出ていったために、会えなくなった。

 今は、父と弟と暮らしている。

 

 これまで、家の家事はすべて母に頼りきりだった。

 だが、家事は父と分担して意外ときちんとまわっている。

 私は料理や掃除を担当している。

 始めは苦戦したものの、やってみればできるものだ。 

 

 だが、私に母の代わりは務まらない。

 日々痛感する。

 母がいなくなってから、家の中の雰囲気ががらりと変わってしまった。

 家事をするのが母の仕事ではない。

 その存在そのものが母の仕事だったんだと思う。 

 

 弟が安室奈美恵の「Just You and I」という曲を何度も何度もリピート再生している。

 何がそんなにお気に入りなのか。

 その理由を最近知った。

 「心が焼けるような空白を 君のほかには 埋められない」という歌詞。

 なるほどな。

 安室奈美恵は、自身の子どもを思ってこの歌詞を作詞したという。

 そのような思いを子どもにさせるなんて。

 弟を抱きしめたくなった。もう高校生だからそんなことはしないけれど。

 

 私は母が大好きだった。

 とても大好きだった。

 

 ならば、会えばいいじゃないかと思う人もいるかもしれない。

 でも、母の行動によって、父は、弟は深く傷つけられた。

 20年以上連れ添った母に裏切られた父の傷は深く、憔悴している。

 多感な時期に事実を知った弟は人間不信な部分が出来てしまった。

 

 私はもう大人だし、気持ちの整理を付けた。

 結局は父も母も1人の男女だったんだ。

 父と母の関係は壊れてしまったけれど、私たちにとって母は1人。

 これまで育ててきてもらったことに感謝しよう。

 

 だが、父と弟は母の肩を持つようなことをいうと、嫌悪感を示す。

 仕方ないのかもしれない。

 

 そんなわけで、母に会おうと連絡をとったりはしない。

 あっちにもこっちにもいい顔をできるほど私は器用じゃない。

 

 それに、母が何を考え、何を思い、過ごしているのか分からない。

 家を出て行ってからというもの、向こうからの連絡がないのだ。

 自分で家を出ていった手前、連絡しにくいのだろうか。

 いや、ケロッとした様子で日々を楽しんでいるのかもしれない。

 私たちは悩み苦しみながらも、必死に前を向いて歩いているのに。

 

 そんな様子をみるのが怖い。

 でもそんなはずはないと心が言っている。

 いつも私たちを思って過ごしているはずだ、

 私たちの母はそんな母だったと。

 

 ああ、やっぱり私は母に会いたいのだ。

 ありがたいことに、母は死んだわけではない。

 生きとし生けるもの、いつ本当に会えなくなるのか分からない。

 

 母と音信不通なこの現状をよくないと思っている。

 パワフルな母だったけれど、いつかどこかで、私たちに頼らなければならなくなる時が来るだろう。

 その時に、頼ってもらえる関係でいたいと思っている。

 一人の大人になるまで手塩にかけて育ててもらったのだから。

 そこの部分には感謝しなければいけない。

 

 でも、その時、私はまっさらな気持ちで母の助けを引き受けることが出来るだろうか。

 今のままではきっと無理だ。

 こんな関係のままでは。

 

 自分がどうしたいのか、どうするべきなのか。

 

 私は心の中で自問自答を繰り返している。

 

お題「#この1年の変化