母が知らない女になった⑤

偽りの日常

 寝た心地がしなかった。

 昨夜、パパとママが寝室でなにやら会話をしていた。

 パパは多分怒っていた。そしてママは多分泣いていた。

 どうやって部屋に戻ったのか覚えていない。

 

 パパはなんで怒ってた?ママはなんで泣いていた? 

 しかも、昨日だけの話ではないようだ。まさは前から気付いていた。

 あんなにひそひそと…。

 これは今までの喧嘩とはわけが違う。

 

 もやもやした気持ちと両親を疑る気持ちが一晩中ぐるぐるしていた。

 

 ママを泣かせるなんてひどい。

 なにをしゃべっいたのか分からなかったけど、そう思った。

 

 リビングに降りる。

 「おはよう。」ママが言った。

 「…おはよ……」

 うまく返せない。

 

 だけど、また思った。

 「ママを泣かせるなんてパパひどい。」

 

 まさも起きてくる。

 「おはよう。」

 まさはママへあいさつを返さない。

 気持ちがこんがらがっているようだ。

 

 マーガリンをたっぷり塗ったトーストとヨーグルトがでてきた。

 ママはいつもどおりふるまっている。

 だが、昨日の夜のあの会話は夢なんかじゃない。

 私たちはなんだかうまく笑えない。

 

 パパが起きてきた。

 私とまさは目を合わせた。

 2人はどのように振舞うのだろう。

 「おはよう。」

 「おはよう。」

 いつもどおりだ。

 

 「今日晩飯いらない。」

 「了解。」

 昨夜何事もなかったかのような会話。

 目を合わせてはいないけれど、朝から目をしっかり合わせて会話することもそんなないし、昨日のはそんなに深刻な話ではないのか…?

 

 とにかく、二人は日常を振舞っているのだから、それでいいのだろう。

 解決したのかな。

 私とまさも何も言わずこれまでどおり振舞うことにした。